住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)はプライバシー権を侵害し違憲だとして、大阪府守口、吹田両市の住民3人が自分の住民票コード削除(ネット離脱)を求めた訴訟の上告審判決

憲法13条は、何人も個人に関する情報をみだりに第三者に開示、公表されない自由を有するものと解される。そこで、住基ネットが前記の自由を侵害するか否かを検討する。

 住基ネットによって管理、利用される本人確認情報は、氏名、生年月日、性別、住所の4情報に、住民票コード及び変更情報を加えたものにすぎない。4情報は、一定の範囲の他者には当然開示されることが予定されている個人識別情報であり、変更情報も転入、転出等の異動事由、異動年月日及び異動前の本人確認情報にとどまるもので、いずれも個人の内面にかかわるような秘匿性の高い情報とはいえない。

 これらの情報は、以前から住民票の記載事項として各市町村で管理、利用されるとともに、法令に基づき必要に応じて他の行政機関等に提供され、事務処理に利用されてきた。そして、住民票コードは、住基ネットによる本人確認情報の管理、利用を目的として、無作為に指定した数列の中から各人に割り当てられたものであるから、前記目的に利用される限りは、その秘匿性の程度は本人確認情報と異ならない。

 また(1)システム上の欠陥等により本人確認情報が容易に漏えいする具体的な危険はない(2)本人確認情報の目的外利用または秘密の漏えい等は、懲戒処分や刑罰をもって禁止されている(3)住基法は、審議会や委員会の設置など、本人確認情報の適切な取り扱いを担保するための制度的措置を講じている−−などに照らせば、本人確認情報が法令等の根拠に基づかずに、または正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示、公表される具体的な危険は生じていない。

 行政機関が住基ネットにより原告住民らの本人確認情報を管理、利用する行為は、個人に関する情報をみだりに第三者に開示、公表するものということはできず、当該個人がこれに同意していないとしても、憲法13条により保障された前記の自由を侵害するものではない。

 また、住基ネットにより原告住民らの本人確認情報が管理、利用されることによって、自己のプライバシーにかかわる情報の取り扱いについて自己決定する権利や利益が違法に侵害されたとする主張にも理由がない。