違憲判決 ゴクリ

北海道砂川市が市有地を神社の敷地として無償で使用させているのは憲法政教分離原則に反するとして、住民が違法確認などを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允長官)は20日、従来の「目的効果基準」とは別の憲法判断基準を示し、市有地の無償提供を違憲と判断した。その上で、違憲状態を解消する方法をさらに審理するよう、二審判決を破棄し、札幌高裁に差し戻した。
 政教分離原則に関する最高裁違憲判決は、1997年の愛媛玉ぐし料訴訟に次いで2件目。
 14人の裁判官中8人の多数意見。憲法判断では、差し戻しに反対した1人を含む9人が違憲、1人が合憲とし、4人は判断できないとした。
 この神社は、町内会館と併設された空知太(そらちぶと)神社。
 判決で大法廷は、公有地を無償使用している宗教施設について、歴史・文化財的な建造物が少なくないほか、寺社の敷地が戦前、官有地に編入された経緯からいまだ公有地上の施設が相当数あると指摘。これらの事情は重要な考慮要素になるとし、目的効果基準を用いず、「施設の性格、提供の経緯や態様、一般人の評価などの諸事情を考慮し、社会通念に照らして総合判断すべきだ」とする別基準を新たに示した
 その上で、砂川市の無償提供に関し「氏子集団の神社を利用した宗教的活動を容易にする効果があり、一般人の目から見て、市が特定の宗教に便宜を提供し、援助していると評価されてもやむを得ない」とし、公の財産を宗教団体の便宜のため利用してはならないとする憲法89条違反と判断。また、宗教団体への特権付与に当たり、信教の自由を保障した憲法20条にも反するとした。 

問題になったのは、同市内の「空知太(そらちぶと)神社」と「富平(とみひら)神社」の敷地。市民が市長を相手取り、公有財産の管理を違法に怠ったとして、神社の撤去などを求めていた。

 違憲判断が示されたのは、空知太神社を巡る訴訟。判決によると、同神社の建物は町内会館と一体化しており、鳥居などとともに市有地上にある。

 市側は「建物は全体で評価すると町内会館であり、特定宗教の援助にはならない」などと主張したが、判決は、敷地内に鳥居があり、建物内部に祠(ほこら)があることなどから、「神社施設にほかならない」と指摘。また、氏子集団が祭事を行っていることから、「敷地を無償で使用させる行為は、市と神道とのかかわり合いが社会的に相当とされる限度を超える」と述べた。

 ただ、大法廷は違憲状態の解消のため、1審・札幌地裁、2審・札幌高裁が認めた神社施設の撤去以外にも、市有地の譲渡などの手段があり得ると例示。他の手段があるかどうかについて審理を尽くすよう、同高裁に差し戻した。

 一方、富平神社の訴訟は、市が、市有地だった神社敷地を町内会に無償譲渡した行為の違憲性が争点になった。大法廷は無償譲渡自体は「違憲の恐れのある状態」を解消するための措置だったとして、合憲と判断した。